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マイケルE.ポーターさんの「経済的価値と社会的価値を同時実現する共通価値の戦略」


ハーバード大学ユニバーシティ・プロフェッサーのマイケルE.ポーターが、

『DIAMOND Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2011年6月号』に、

「経済的価値と社会的価値を同時実現する共通価値の戦略」と題して、


経済的価値を創造しながら、
社会的ニーズに対応することで社会的価値も創造するというアプローチ、


「共通価値」(shared values)


について解説していますので、紹介したいと思います。


この共通価値という概念。

震災後の日本のあり方についても考えさせられますし、
多くの企業や人々はこの共通価値をこの震災後、
すでに実現しようとしていたのではないか、
と感じました。


DIAMOND Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2011年6月号





「共通価値」とは何か?

ポーターさんはむずかしい言葉をつかっていますが、
かんたんにいうと、


よのなかのためになることをして、
その結果としてお金もうけにもなるようにしましょう



ということですね。

そんなの無理だろうという意見もあれば、
当たり前じゃないかという意見もあるのではないかと思います。


おもしろいことにポーターさんは、
CSR(企業の社会的責任)という考え方も否定しています。

CSRというのは、先日も昭和時代の私の履歴書で
アサヒビールの先駆的な活動を取り上げましたが、

企業が利益を追求するだけではなく、
文化活動や地域活動を積極的に支援していこうというものです。


いま大企業の多くは、CSR活動に積極的ですが、
ポーターさんに言わせれば、
CSRという考え方は、

「企業にとって、社会問題は中心課題ではなく、その他の課題なのである」

としており、

「共通価値」は企業にとっての中心課題であり、
経済的に成功するための新しい方法なのだと言っているわけです。


さらにポーターさんは、
企業本来の目的について、


「単なる利益ではなく、共通価値の創出であると再定義すべき」

とも述べています。


ここで興味深いのは、ポーターさんに言わせると、
フェア・トレードも「共通価値」ではないと。


──────────────────────────
【引用ここから】


フェア・トレードの目的は、同じ作物に高い価格を支払うことで、
貧しい農民の手取り額を増やすことである。

気高い動機ではあるが、
創造された価値全体を拡大するものではなく、
主に再配分するためのものである。


一方、共通価値では、
農民の能率、収穫高、品質、持続可能性を高めるために、
作物の育成技術を改善したり、

サプライヤーなど支援者の地域クラスターを強化したりすることが重視される。

その結果、売上げと利益のパイが大きくなり、
農家と収穫物を購入する企業の双方が恩恵に浴する。


たとえば、以前コートジボワールのカカオ豆農家を調査した時、
フェア・トレードで農民の所得は10~20%増加するが、
共通価値への投資では300%超増加する可能性があった。


【引用ここまで】
──────────────────────────


共通価値は再配分主義ではないわけです。
フェアトレードは再配分主義なのですね。
わかるような気がします。


企業は、社会的価値を創造することで経済的価値を創造できる。

つまり、
世の中のためになることをすると
もうかりますよ。

ポーターさんはこの共通価値を創るには三つあると言います。





1、製品と市場を見直す。

2、バリューチェーンの生産性を再定義する。

3、企業が拠点を置く地域を支援する産業クラスターをつくる。







【1、製品と市場を見直す】


例えば食品メーカーは、
消費を刺激するために味や量を重視してきたわけですが、

いまは

「体によい栄養」

という基本ニーズに立ち返っています。


また、インテルとIBMは、公益企業各社にむけて、
デジタル技術を活用して
電力消費を節減する方法を提案。


さらに、GEでは、

「エコマジネーション」
(環境と経済を両立させ、持続可能な社会を実現するためのプログラム)

この関連の売り上げが、2009年で180億ドルに達し、
今後5年間、関連売り上げは総売り上げの2倍のペースで
拡大すると予測されているそうです。




【2、バリューチェーンの生産性を再定義する】


ウォルマートは2009年、
包装を減らし、トラック配送ルートを見直しました。

その結果、納入数量が増えたにもかかわらず、
2億ドルのコスト削減を実現。

店舗の使用済みプラスチックを処分する方法を変えたことで、
処理コストを数百万ドル削減。


資源の有効活用、プロセス効率と品質向上を通して、
実質的にはコスト減につながる場合もあるということです。


J&Jでは、従業員の禁煙支援など
さまざまな健康増進プログラムを実施した結果、

医療費を2億5千万ドル削減することにしたのだそうです。

これは健康関連支出1ドルにつき
2ドル71セントのリターンがあった計算になるそうで、

日本の社会保障費支出削減には
私はこの方法しかないと前から思っています。


このプログラムにより、
従業員の欠勤が減り、生産性が向上するというメリットもあったと。




【3、企業が拠点を置く地域を支援する産業クラスターをつくる】


特定分野の企業、関連企業、
サプライヤー、サービス・プロバイダー、
ロジスティックス等が地理的に集積した地域、

これをクラスターと言いますが、
クラスター内には、
企業だけではなく、学術組織、業界団体も存在します。

学校、大学、浄水、独占禁止法、品質基準、
市場の透明性といった、周辺の地域社会の公的資産をも
クラスターは利用。


企業は、自社の生産性を高めるためにクラスターを形成するわけですが、

クラスターを構成する条件の欠陥やギャップがあったときには、
それを解消することで、共通価値を創造できるのだと
ポーターさんは言っています。



────────────────


今回の震災を受けて、
本当に多くの方がボランティアとして被災地を助けてくれました。

社会的価値は大いに創造されたように思います。

しかし、社会的価値が一過性のブームであったり、
一時的な支援に終わってしまった場合には、
復興とはいえません。


社会的価値を創造し、それが同時に経済的価値にもなるのであれば、
雇用が生まれ、人が集まり、
またにぎやかな町並みが戻ってくることでしょう。

これは何も被災地だけではなく、
日本全体、世界全体に言えることのように思えます。


ポーターさんの主張を読みながら、
「私の履歴書」に出てくる昭和時代の経済人たちは、

すでにこの「共通価値」を生み出す努力をしていたのではないかなと
思えてなりません。


「共通価値」は、慈善ではなくあくまでも利己的な行為。
しかしその目的は、社会的価値を生み出すことで経済的価値も同時に生み出すと。

なかなか新鮮な、そして古典的な議論だと感じる論文でした。






ウィキペディアより
江戸商人の家訓

石田梅岩の記述
「二重の利を取り、甘き毒を喰ひ、自死するやうなこと多かるべし」
「実の商人は、先も立、我も立つことを思うなり」

三井家家訓(宗竺遺書)
「多くをむさぼると紛糾のもととなる」
「不心得の一族は協議し、処分せよ」

住友家家訓
「職務に由り自己の利益を図るべからず」
「名誉を害し、信用を傷つくるの挙動あるべからず」
「廉恥を重んじ、貪汚(どんお)の所為あるべからず」
「我営業は信用を重じ、確実を旨とし、以て一家の鞏固隆盛を期す」

近江商人の家訓
「三方(売り手・買い手・世間)よし」








DIAMOND Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2011年6月号

特集 マイケル E. ポーター 戦略と競争優位


経済的価値と社会的価値を同時実現する共通価値の戦略
マイケル E. ポーター ハーバード大学 ユニバーシティ・プロフェッサー
マーク R. クラマー ハーバード・ジョン F. ケネディ・スクール・オブ・ガバメント 上級研究員

5つの競争要因から業界構造を分析し、戦略を立案する
[改訂]競争の戦略
マイケル E. ポーター ハーバード大学 ユニバーシティ・プロフェッサー

「何をすべきか」、そして「何をすべきでないか」
[新訳]戦略の本質
マイケル E. ポーター ハーバード大学 ユニバーシティ・プロフェッサー

キーワードで読み解く「戦略の本質」の読み方
與那原 建 琉球大学 観光産業科学部産業経営学科 教授
岩崎卓也 『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー』編集長

競争のルールも競争優位の源泉も変わらない
[新訳] 戦略とインターネット
マイケル E. ポーター ハーバード大学 ユニバーシティ・プロフェッサー

環境規制は戦略ポジションを強化する
[新訳] 環境、イノベーション、競争優位
マイケル E. ポーター ハーバード大学 ユニバーシティ・プロフェッサー
ラース・ファン・デル・リンデ 元 ザンクトガレン大学 インターナショナル・マネジメント・リサーチ・インスティテュート 研究員

情報革命が戦略にどのような影響を及ぼすか
[新訳]ITと競争優位
マイケル E. ポーター ハーバード大学 ユニバーシティ・プロフェッサー
ビクター E. ミラー 元 アーサー・アンダーセン マネージング・パートナー

OPINION
競争を利用して強みを発見する
大竹文雄 大阪大学 社会経済研究所 教授

CHIEF OFFICERS
ホワイトカラーの生産性を高めれば日本企業はもっと強くなる
石橋博史 システム科学 代表取締役 社長
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