2014/02/16
「デフレを脱却できるか」ではなく「デフレを脱却したらどうなるのか」へ
昨年の日本経済は「アベノミクス」に沸きました。株価は一年で57%の上昇と、
主要国ナンバー1の結果となりました。
安倍政権の進める金融政策に株価が大きく反応、
為替の動向に加え、
緊急経済対策による公共投資の拡大もあいまって、
昨年は景気回復の一年だったと言ってもよいでしょう。
今年は、長年いわれていた、
「デフレを脱却できるか」
というテーマではなく、
「デフレを脱却したらどうなるのか」
へ議論が移行していくのだろうというレポートがありましたので、
みなさんにシェアしたいと思います。
「アベノミクス2年目を迎える2014年の日本経済~デフレを脱却したらどうなるのか」
(『季刊 政策・経営研究』2014/02(2014 Vol.1))三菱UFJリサーチ&コンサルティング鈴木明彦調査部長
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【引用ここから】
2014年は、「デフレを脱却できるか」ではなく、「デフレを脱却したらどうなるのか」ということが重要
なテーマになってくる。
デフレを脱却すると、これまで実質個人消費を支えていたデフレのメリットがなくなる。
デフレ脱却とともに個人消費が減速するというインフレのデメリットに注意が必要となろう。
一方、需給ギャップが縮小していることは、景気が上振れる前向きな動きとなりうる。
設備や雇用の過剰感が解消して一部に不足感が出ているのであれば、設備投資や雇用が拡大してもおかし
くない。
そうならないとすれば、それは経営者が将来に対する展望を持てず、攻めに転じることができないからだ
。
だからといって、政府が何かしてくれるのを待っていても道は開けてこない。
アベノミクスの夢から覚めて、新たな成長分野を自分たちの手で切り開くようになることが、2014年を新
たな始まりの年にするカギになるだろう。
【引用ここまで】
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問題点として筆者は、
1、設備投資は回復していない
2、消費税率引き上げの影響
3、財政支出拡大効果の剥落
4、デフレのメリットが消える
5、賃金が上昇していない
などの指摘をしています。
失われた二十年と呼ばれ、
長きに渡りデフレと戦ってきた日本経済ですが、
ついにデフレを脱却するところまできました。
しかし当然ですが、
デフレを脱却した次のステージでは、
また大きな問題が現れることになります。
企業の利益は回復し、法人減税も実施されるということで、
設備投資は回復するはずとされていますが、
まだその兆しは見えていません。
この大きな理由は、
将来の持続的な成長に対する自信が持てないからではないかと
このレポートでは指摘をしています。
将来に対する成長期待、
つまり売り上げ拡大の見込みが立たなければ、
設備投資は増えないという、
経営者からしてみれば当たり前の話になるわけです。
また4月からは消費税が増税されます。
3月は駆け込み需要でにぎわうことと思われますが、
4月はその反動による減少で落ち込むことは間違いありません。
また消費税が8%に引き上げられることにより、
価格転嫁が発生、消費者物価は2%程度押し上げられる計算とされます。
4月の消費者物価上昇率は、
3~4%程度に高まる可能性があり、
実質所得の減少と消費の下押しが考えられています。
またアベノミクス「第二の矢」である、
「機動的な財政政策」
は12年度補正による公共工事の拡大の結果、
13年度の成長率を押し上げている計算となります。
14年度にはその反動が予想されるわけです。
また、実質消費が近年増加しています。
名目消費を上回る実質消費の増加は、
物価の下落による実質ベースの所得、
消費の増加によってもたらされているとみなすことができます。
リーマンショック後の実質消費の回復のかなりの部分はデフレのメリットの現れであると。
そうであるならば、デフレ脱却によりそのメリットがなくなり、
物価の上昇が実質消費を押し下げる方向で効いてくることになります。
最後に、最も重要な賃金の上昇についてです。
デフレを脱却して物価が上がれば賃金が上昇するというのは、
そう簡単なことではありません。
政府与党のなかには、
収益があがっているのに賃金を上げない企業はけしからん
と発言する方がいるようですが、
利益が下がったとしても、
賃金をカットすることはなかなかできないのが企業というものです。
会社が人をもっと雇いたいとなる、
事業の活性化、働く人に対する需要が増えれば、
賃金は上昇し、雇用は拡大することになります。
そういう意味でも、
経済の活性化に資する、新規事業の増加、起業の活性化は重要になってくるわけで、
つくる仙台の事業は小さな小さなものですが、
日本経済を支えるための一つの試みでもあるわけです。
いずれにしても、
デフレを脱却したらどうなるのか、
賢明な起業家・経営者の方々は、戦略を練り始めているようです。
多くのみなさんもそろそろ次のステージをにらみ、
新たな経済情勢を見ていく必要があることでしょう。
適宜、このメルマガでもお伝えしていきたいと思います。
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