2013/04/10
自分の命を棄てる覚悟をすれば、諸策は自然とついてくる
その昔、孟子は、当時危機のときにあって、
国民の生命を全うさせるためにはということで、
二つの策を提示しました。
ひとつは、王様本人は国を去るのがよいという策。
もう一つは、祖先以来、代々守った国であるから、
その守護に命を賭け、去るべきではないという策。
孟子は後者の策を主張したのでした。
しかし、最初の策について勘違いをしている人が多いので、
しっかりと理解することが必要です。
周の国の祖先の大王は、異民族が攻めてきたとき、
胸中にはすでに将来への成算があって、
いまはこの異民族の勢いがまさに盛強であるから、
しばらくこれをおごらせておき、勢いが衰えるのを待って制圧しよう、
と考えたのでした。
それゆえ、異民族のほしがるものを贈って、
これに仕え、土地まですべて与えたのでした。
これを見て異民族の心はますますおごり、
そしてわが民の心はますます、
この大王の仁心に心服するようになったのでした。
そのため、
大王はその都を去って山のふもとに至り、
ここにまちづくりをしたところ、
大王を慕う民衆もそれを追って移り住み、
やがてこれが武王に至って、
ついに周室を建設するという大業を起こす基となったのでした。
以上はすべて大王の成算であって、
これは敵の実情を明確にし、自身の実情を明確にした上に、
大きな度量のある人物でなければ、
とうていなし得ることではありません。
結局孟子が言いたかったのは二つの策のうちの後者、
父祖以来のこの国の防衛に自己の生命を棄てる覚悟を持て
ということでした。
将来への確固たる成算を立て、
目の前の小さなことにこだわってはならないとも言っています。
この覚悟が内に確立すれば、
諸策もおのずから立つのだ。
ということを約150年前に、
政治犯として牢屋の中で、
囚人と看守に対して
熱心に教えた人がいたのでした。
その政治犯は間もなく
斬首刑になってしまいます。
そして時は立ち、
その政治犯の弟子たちが、
明治維新の原動力となり、
日本を変えていったのでした。
この本をときどき繰り返し読んでいます。
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