2013/05/31
国がよく治まるには、故家・遺俗・流風・善政の力が必要である
「故家」というのは、旧臣の家のこと。
「遺俗」とは、今に残っている古来の風俗のこと。
「流風」とは、上から下々へ流れ下った風俗風習のこと。
「善政」とは、よい政治のしかたのこと。
古代中国の夏・殷・周三代の聖人によって統治されたよい世の中には、
みな、この故家・遺俗・流風・善政の四者が必ずありました。
殷の時代の政治は、特に質朴を大切にし、
表面を飾ろうとしなかった上に、
聖賢の君主が多く出られたので、
とりわけ、故家以下の四者が盛んであって、
見るべきものがありました。
一国がよく治まり、いつまでも続くのは、
領土が広いためでもなく、
民が多いためでもなく、
ただこの故家以下の四者の力によるのです。
国家の頼むべきもの、この四者に勝るものはない。
だから、政治を行う人物は、
このことに心を用いなければなりません。
このことを認識せず、やたらに祖宗の定めた法を変え、
国家のよき風俗を改めるものは、国賊ということができる。
自分の家の祖先のことを考え、
また主君の家の祖先の事業を考え、
次には藩の家老以下、勲功のあった家の伝記をたずね、
古来の制度・風俗などに至るまですべて考究して、
世から消えたこと、
世にあらわれなかったことを明らかにして表彰し、
昔のよい国風を保存するように心掛けねばなりません。
以上のことに心を用い、その業績があがったならば、
それをもとにして一大著述を完成し、
広く世に伝え、それによって、
わが国の故家・遺俗・流風・善政がますます明らかになるようにしたならば、
これもまた国に役立つこととなるのです。
ということを約150年前に、
政治犯として牢屋の中で、
囚人と看守に対して
熱心に教えた人がいたのでした。
その政治犯は間もなく
斬首刑になってしまいます。
そして時は立ち、
その政治犯の弟子たちが、
明治維新の原動力となり、
日本を変えていったのでした。
この本をときどき繰り返し読んでいます。